あおば皮ふ科『院長日記』

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zoom RSS ピロリ菌は悪い菌?

<<   作成日時 : 2016/03/15 13:41   >>

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私事ですが、最近、ピロリ菌の除菌療法を受けました。内視鏡で胃炎が見つかり、ピロリ菌抗体が陽性だったからです。2種類の抗生物質と1種類の胃薬を1週間内服し、1ヶ月後の先週、効果判定の呼気テストを受け、結果は未だ訊いておりません。

ピロリ菌と言えば、胃炎、胃潰瘍の原因になるだけではなく、胃がんの原因にもなる、あまりいいイメージのない菌です。皮膚科でも、慢性蕁麻疹の方でピロリ菌の除菌を受けたら症状が軽快することがあります。成人では抗体陽性であれば除菌が推奨されていますが、神奈川県のとある地域では、自治体と医師会を挙げて中学生の保菌者(全体の2−5%程度)に対する除菌療法を開始するそうです。

ところで、昨年、以下のような本が出版されました。

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失われてゆく、我々の内なる細菌 みすず書房



腸内フローラ(腸内細菌叢)が、さまざまな疾患の発症に関連していることが証明されつつあります。ヨーグルトを食べると花粉症の症状が軽くなるという話を聞いたことがある方は少なくないでしょう。この本の著者は、正常な腸内フローラの1つであるピロリ菌が、ヒトの健康に重要な役割を演じており、この細菌の消失が現代で増加しているアレルギー疾患などの発症に関連していることを種々のデータから推測しています。

20世紀初頭までピロリ菌はほとんどのヒトに常在していたとのこと。それが、先進国では衛生環境の整備などで消失し始め、最近の陽性率はかなり低下しています。そのこととアレルギー疾患などの増加が関連しているだけではなく、保菌者が除菌を行うと、胃食道逆流症(逆流性食道炎)の発症頻度が上がるなどのデメリットもあるようです。著者は、ピロリ菌には二面性があり、人生の前半には健康にとって利益をもたらす一方、晩年においては健康にとって障壁となることが多いと結論づけています。

さらに著者は、健康の維持に役立つ腸内フローラは、現代人では抗生物質の使用によって種類が激減しており、そのことがアレルギー疾患だけでなく、炎症性腸疾患や自閉症の発症にも関連していることを統計的に示しています。

菌はすべて「バイ菌」と考えず、代謝、免疫といった重要な機能に常に関連していることを認識しなければいけません。抗生物質は、言い方を変えれば、病原菌とそれに「人質」にされた善玉菌に銃を乱射するような行為なのかもしれません。現代医療において、抗生物質は感染症に必要不可欠ですが、乱用は控えなければいけませんね。

先に述べた、自治体と医師会で中学生のピロリ菌を除去しようという試みは吉と出るでしょうか。実現させるのなら、除菌した方の健康状態について長期間の追跡調査を必ず行って欲しいと思います。

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